どこと組むか②「現地財閥との提携」

マレーシア、ランカウイ島にあるリゾートホテル。ちなみに本文の内容とは関係ないです。

財閥とは?

前回は現地パートナー候補の中から「政府系企業との提携」について書きました。
今回は「現地財閥との提携」について触れてみます。

皆さんご存知の通り、大体どこのASEANの国にも財閥と呼ばれる非常に大きなコングロマリット(複合企業体)が存在します。

財閥によって得意としてる事業分野があったりもしますが、なかには金融、不動産、通信、製造業、飲食、デパート、ホテル、学校、運輸等、ほとんど全ての事業を展開している大財閥もあります。財閥グループは第2次世界大戦の前後ぐらいから成長したところが多く、現在では創業者オーナーの2代目、早いところで3代目が事業を担ってるところもあります。

とにかく財閥の影響力は絶大です。経済界だけでなく政界とのネットワークも広く太く、その情報量も半端ないです。現地当局との折衝、業界団体との関係構築も、財閥にお願いしておけば先ず問題ないです。

少し余談になりますが、そんな財閥ファミリーの日常はご想像の通りとっても豪華です🤩。外出にはガードマン、医師が同行して、自宅にはシェフがいたりもします。世界各地に豪邸を持っていて、車、アートコレクション、自家用飛行機、ヘリコプター、農場、リゾート島等々、いわゆる「華麗なる一族」を地でいっている方々です(ここについてはまたどこかで書こうと思います)。

財閥の種類

一言に財閥と言っても色々なタイプがあります。

財閥一族を民族で分けると、現地民族系、中華系、その他移民系(インド系、スペイン系等)に分かれます。

現地民族系は、タイ民族、マレー民族といった元々現地にいた民族が率いる財閥です。

中華系は16世紀以降に中国大陸から東南アジアに入植してきた中華系民族の子孫です(華僑とも言われてます)。その他移民系には、中華系同様、過去に入植したインド系、スペイン系の民族が含まれます。

民族によって、ビジネスに対する価値観、政治観、宗教、文化、伝統も異なります。対応する際には失礼のないよう気を付けましょう。

財閥の経営スタイル

財閥とのビジネスを考える上で、ここからが大切なところです。

彼らの事業運営スタイルはざっくり二つのタイプに分かれます。

一つ目は財閥ファミリーが直接事業に関与しているタイプ。二つ目は財閥ファミリーは事業の所有に専念し、実際の事業運営はプロの経営者に任せているタイプです。

多くの人が持っている財閥のイメージは、最初のタイプかと思います。

とっても偉そうで怖い人がいて、その人がその場その場で全ての意思決定を下し、もしその人のメガネに敵わなければ即刻「クビッ」という感じでしょうか。確かにこの手の財閥オーナーはいます。

一方で、財閥の中にはグループが大きくなり過ぎたり、次世代への権限以上が進んだり、ファミリービジネスのあり方を検討したりした結果、事業の経営から少し距離を置き、事業の所有に注力しているところもあります。これが二つ目のタイプです。

1. 直接事業を運営しているケース(一つ目のタイプ)

財閥ファミリーがほとんど全ての権限を握ってるので、彼らと話をして了解が得られたら(或いは気に入られたら)、即座に決定というパターンです。

この場合、正直、現場の担当スタッフが少々トロかろうが、基本的な人間関係さえ作っておけば、ぶっちゃけあまり問題になりません。オーナーの顔色を伺って事業を進めれば良いのです。

しっかりと下調べを行い、幾つかの財閥の中から自分達が行おうとしている事業のバリューアップに繋がりそうなところ、ケミストリーが近そうなところを選びましょう。候補先が決まった後は猛アタックです。

一つ目のタイプは意思決定ラインが明快で速いだけに、その勢いに振り回されてしまう日本企業もありますが、個人的には付き合いやすい先だと思ってます。

2. 事業の所有と運営が分かれているケース(二つ目のタイプ)

このパターンは少しだけ注意が必要です。

先程触れた通り、経営の現代化が進んでいる財閥では、企業の所有と経営が分離が進んでいます。財閥ファミリーは、グループ事業会社の会長、役員職を幅広く兼務してますが、ベースは大株主という立ち位置です。

グループ各社の実際の運営はヘッドハンティング、或いは古くから付き合いのある経営の専門家に任せており、彼らからの説明をベースに取締役会、経営会議で重要な意思決定を下していきます。

この場合、幾ら財閥ファミリーと個人的にウマがあっても、何回食事に行ったとしても、実際に事業を行う経営陣と話が通じてなくては意味ありません(勿論逆もあります)。

財閥ファミリーと経営陣の両者が深く信用し合っていればまだしもですが、着任から日が浅い、或いは経営陣が異様に財閥ファミリーに気を遣っているところでは、日本企業並みに社内調整に時間が掛かったりします😅

財閥ファミリーと前向きに話が進んでいても、どこかのタイミングで「実務のヘッドを紹介するからここから先はその人と」となります。事務のヘッド(実際の経営陣ですね)は、彼らなりにプロジェクトのリスクとリターンを正しく理解した上で、意識決定機関である取締役会、経営会議に上程する必要があります。

逆に、先に経営陣と事業内容の大筋を詰めることが出来たとしても、彼らが社内協議に入ったタイミングで、財閥ファミリーから「その件では丁度別のことを考えていたから、ちょっと待ってて」と言われることもあります。

経営陣も所詮は雇われ社長なので、よほどガッツがあるか、自分達の提案の方がどう見ても素晴らしい場合を除いて、財閥ファミリーの考えに口を挟んでまで、皆さんからの提案を押し通すことは普通ありません。

事業会社の社長、銀行の頭取と合意に至ったと喜び勇んで本社に報告した後、実はオーナーである財閥ファミリーが全く認識してなかったというケースもありましたし、逆に財閥ファミリーはOKでも現場の経営陣が納得しておらず、意思決定機関である取締役会になかなか上程してもらえないというケースもありました。

少々難しいですが、普段のやり取りから先方の状況を推し量る観察力、プロジェクトを推進する調整力が試されるところです。

またASEANのビジネス界は人の移動も激しいです。経営陣のジョブホッピングも普通にあります。折角経営陣を納得させても、人が変わって水の泡ということもあります。

その点、最初のケースでは、財閥のファミリーメンバーが交渉相手なだけに、担当者の変更リスクも基本心配しなくて良いです。だから個人的にはやりやすいと思ってます。

財閥と事業を行う際の注意点

非常にパワフルな提携先という点で財閥は間違いなく良いのですが、その分気を付けておかないと、パワフルなだけに油断していると飲みこまれるリスクがあります。

面白そうなプロジェクトだと、大抵のケースで財閥側から過半数の持分が欲しいと言われます。

その場合、何故皆さんの企業が過半数を持つ必要があるのか、しっかりとしたロジック、事例を説明出来なければいけません。

仮に事業ライセンスの関係でマジョリティが取得出来ないケースでも、同等の意思決定権、利益分配権を持つことは出来ます。

「現地のことは任せて」とか「外資はマイノリティがベター」とか言われるかもしれませんが、事業運営上、必要なこと譲れないことはしっかりと伝えた方が良いです。僕も共同事業の持分交渉、権利交渉ではかなりの修羅場を潜ってます。

次にプロジェクトの規模、内容にも留意しましょう。

財閥は元々の母体が大きいこともあって、あまり小さな事業には関心を示しません。

数億円規模のビジネスの話をしても、よっぽど人目を引くアイデアがないと「ふ〜ん」という感じで流されてしまいます。

どこもそうでしょうが、早く育つ事業、スケールのある事業、シナジーの見込める事業がストライクゾーンのど真ん中です。

また財閥側は、基本自分達だけで何でも出来ると思ってるので、皆さんが彼らの持ってない何を持っているのか、どんなバリューを提供出来るかを突き詰めておく必要があります。

それから、ミーティングの出席者にも気を配りましょう。どの人が財閥ファミリーのお気に入りでキーパーソンなのか、出席者メンバーまたはメールの宛先リストに財閥のファミリーメンバーが入ってないかにも注意が必要です。

特に中華系は苗字の種類が多くないので、他人でも同じ苗字ということがあります。本名の代わりに英語の通称(RobertとかJohnとか)を利用されている人も多く、苗字も見えづらいです。注意を怠りがちになりますが、名刺、メールアドレスを確認してみて下さい。財閥ファミリーと同じ苗字の人はファミリーメンバーの可能性があります。

ミドルネームを使う習慣がある地域では、ミドルネームに財閥ファミリーの名称を残し、アルファベットの頭文字だけを名刺、メースアドレスに表記しているケースもあります(Janet R Smithという名前の場合、Rが財閥ファミリーの頭文字だったりします)。

財閥オーナーにも色々なタイプの人がいます。コワモテ、話しやすい、無口等々、タイプは様々ですが、全員が経験豊富なプロです。2代目、3代目であればしっかりとした英才教育を受けてます。心してアプローチしましょう。

プロジェクトの内容、皆さんご自身が気に入られると一気に話が進みます。

日本では経験出来ないようなビジネスダイナミズムを味わえますよ😁

次は現地民間企業との提携についてです。

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