サプライチェーン問題から垣間見えるASEANらしさ

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港に集めれたコンテナ、トラック。最近はどこも人手不足が課題です

サプライチェーン問題とは?

最近は世界のどこの国・地域でも大なり小なりサプライチェーン問題(Supply Chain Issue)が話題となってます。

2020年からの世界的なコロナ感染拡大を受けての外出禁止によって、各産業の川上分野(原材料、部品など)で生産活動、そしてモノを運ぶ物流サービスが滞り、予定されたモノがなかなか届かない、遅配が起きる。またそれが同様に川中に位置する加工、組み立て業者、更には川下に位置する卸、販売業者へと次々に波及しているのです。

2020年から2021年の当初は、自宅で過ごす時間が増えたことで(皆さんも経験したと思いますが)、PC、デジタル機器、日用品、部屋着などの特需に生産、物流が追いつかず、様々な分野で品切れ、価格上昇が起きました。自動車メーカー各社が車載用の半導体がないと騒いでいたのは記憶に新しいかと思います。

2022年になってようやく落ち着き始めた矢先、今度はロシアによるウクライナ侵攻、そして中国にコロナ拡大による再ロックダウン(都市封鎖)が起こり、再び物流が目詰まりしてしまいました。

更に経済制裁によってロシアからのエネルギー輸出が減ったこと、穀物輸出の多いウクライナ経済、物流が麻痺し、今回は石油、ガス、ガソリンといったエネルギー、小麦を中心した食品原材料の品薄、価格高騰が顕著に起こっています。

ASEANではより深刻な問題へ

このサプライチェーン問題ですが、最初に起こった半導体不足も産業にとって深刻な問題なのですが、次に起こったエネルギー、食料品の品薄、価格高騰は、一般市民の生活に直にインパクトがあるという点で実はとても深刻な問題なのです。

特に所得水準の低い国では、食料品が買えなくて国民が暴動を起こす危険性さえあります。

ASEAN各国も食料品の確保には躍起になってます。

インドネシアが国内供給量確保を優先するためにパーム油の輸出を禁止したり(約1ヶ月後に解除)、マレーシアが鶏肉の輸出を禁止したりしてます。また各国では主要食料品に対する価格統制の動きも強まっています。

もちろん、上記政策の副作用も現れてきてます。

インドネシアによるパーム油輸出禁止により、パーム油のアジア価格が振れたり、マレーシアによる鶏肉輸出禁止により、隣国のシンガポールではマーケットに鶏肉がないという状況が起きており、現地メディアでも連日大きく取り上げられてます。

ASEANの逞しさと微妙なバランス

このような状況下、アジアの人達はどのように過ごしているのでしょうか。

鶏肉を例に取ってのシンガポールですが、ここは正直教育水準、所得水準も高くしっかりした人が多いです。鶏肉が入手しづらい状況を危惧している人はいますが、大概のビジネスマン、政府関係者は落ち着いており、そんなには悲観してません。

元々シンガポールは大概のモノを輸入に頼ってます。食料自給率も10%前後と言われてます。

そのため、国内にはいざという時の備蓄がありますし、そもそも国内需要が小さいため(人口が少ないので)、いくらでも他国から購入出来る、購入先を変える、つまり代替が効くと見ている人が多いのです。

またマレーシアから買っている鶏肉は基本フレッシュチキンなので、冷凍チキンが入ってくれば十分というシンガポール人もいます。

そもそもマレーシアのフレッシュチキンのクオリティ(品質管理)に疑問を持っているシンガポール人も結構います。

実際マレーシアの鶏肉、鶏卵から食中毒ウィルスが発見されたというニュースはよく耳にします。そういう人たちは元々好んでフローズンチキン(特に品質管理が行き届いたフレッシュフローズン)を選んでいるので、正直ケロッとしています。

もちろん、シンガポールでフレッシュチキンを使ったビジネスをしている方々(例えばチキンライスのお店)は大変なことになってますが…

一方のマレーシアはどうでしょうか。 鶏肉の輸入が止まったシンガポールよりも、実はマレーシアの方が大変だったりします。

いくら政府の方針とは言え、一晩で販売先を変えることなど簡単ではないです。

仮に即座に国内市場に切り替えられたとしても、国内市場は価格統制が行われており、簡単に儲けることは出来ません。

今のような穀物価格高(鶏肉業者にとってはエサ代上昇。つまりコスト増)では、売ってもほとんど儲からないことだってあります。

実際、パーム油の輸出を禁止したインドネシアにしても、一夜にして輸出業者が国内に販路を切り替えられる訳もなく、結局輸出業者の倉庫に大量のパーム油の在庫が溜まることになります(パーム油は保管出来ますからね)。そうなるとインドネシア国内農家からパームの買い付けが減り、結果農家が疲弊するということが起きてしまうのです。

一方で、こんなことが起きるとASEANのクリエイティブ😁な人たちは即座に色々なことを考え始めます。

簡単な抜け道は密貿易ですが、流石にこれはリスクが高いです。

なので例えばマレーシアの話に戻ると、鶏肉業者はチキンの卸値を統制価格としながらも、これまでは見たことのない「取扱い手数料」「プロセスフィー」といった一見訳の分からない新費目をチャージするなどして埋め合わせを図るのです。

川下のプレイヤーもサプライヤーのやり口に疑問を感じながらも、売手優位の下、モノがないことには商売にならないので、渋々高値で買って同様にどこかで転嫁してその分を取り返します。

日本ではなかなか想像し難いことですが、ASEANではよくある光景です。

パッと見ると食料確保、インフレ抑制に繋がる政策なのですが、後ろでは余計な費用が発生しており全体の生産性はむしろ下がってるのかもしれません。

それでもやがて問題が沈静化すると、いつの間にか普通に平時に戻るのもASEANらしさなのです。

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