急増している中間所得者層の定義
消費市場を考える上で、次に気を付けて欲しいのは現地の所得水準です。
これまでの堅調な経済成長によって、域内各国で生活する人々の所得水準は大きく向上しました。
様々な調査レポートを見てもお分かりの通りですが、最近は複数のメディアでASEANの中間所得者層の急増は、日本企業にとって大きなビジネス機会になり得ると取り上げられてます。
ではここで言っている中間所得者層とはどのような人達なのでしょうか?
調査レポートを見ると、中間所得者層の定義として、世帯当たりの年間可処分所得をUSD5,000以上としているところが多いです。
更に具体的には、下位中間層がUSD5,000〜 USD15,000、上位中間層が USD15,000〜USD30,000、富裕層がUSD30,000以上となってます。ちなみに日本の経済産業省の資料を見ても分類は同じようです。
一般的には、世帯の年間可処分所得がUSD5,000を超える辺りから、自動車、冷蔵庫、洗濯機といった耐久財、消費財、嗜好品への支出がグンと伸びると言われてます。
この中間所得者層基準をベースにすれば、少し意外かもしれませんがASEANの半分以上の世帯が既に中間所得者層ということになります。
人口ベースでは実に3億人を軽く超える規模です。何かやたら発展しているイメージですよね。
各国の所得水準別世帯数の内訳
実際にASEAN各国の所得者別世帯数を見てみましょう。
上位中間層、下位中間層を一つの中間層とした場合、域内で経済成長が相対的に進んでいるベトナムを加えた6カ国では、低所得者層が最も少ない層になっていることが分かります。
凄いですよね。
次に少しデータは古くなりますが、所得水準別世帯数の推移を見てみましょう。
先行するシンガポール、マレーシアでは高所得者層が大幅に増加、タイ、フィリピン、インドネシア、ベトナムでは中間所得者層が急増していることが分かります。
非常に大きな消費者市場が物凄い速さで生まれていることが伺えます。
中間所得者の実態
世の中的に中間所得者層と呼ばれている層が、ASEANで急増していることが分かりました!
でもちょと待って下さい🤚
実際のところ年間USD 5,000の可処分所得で何が出来るのでしょうか🤔
前回の「ざっくり生活感レベル」を参考に数字を調整してみます。
例えば日本とほぼ同水準のシンガポールに対して、マレーシアの現地生活物価水準は30〜40%ぐらいと言いました。収入に置き換えるとマレーシアでのUSD5,000は日本でUSD15,000(約3倍)という金銭感覚です。
少し大胆ですが住宅家賃を度外視して年間USD15,000という数字を考えてみて下さい。日本円で約170万円です。
貯金やらローンで頑張れば多少の耐久財は買えるかもしれませんが、ちょっと日本の中間所得者のイメージとはかけ離れてませんか?
次に上位中間層(年間の可処分所得がUSD15,000超)を想像して見ましょう。ここであれば3倍してUSD 45,000水準となります。日本の中間層に近いイメージです。日本の厚生労働省の資料を見ても、日本の勤労者世帯の可処分所得は大体月40万円弱のようです。
最後に富裕層(年間の可処分所得がUSD 35,000以上)を見てみましょう。感覚的にはUSD105,000です。この辺りであれば、東京港区、中央区の平均とも言われる高所得サラリーマン世帯のイメージに近くなります。
顧客ターゲット層として「ASEANで急増している中間所得者層≒日本の一般サラリーマン世帯」をイメージされてませんか?
調査レポートを見て、「中間所得者層の比率が高い」、「中間所得者層がもの凄い勢いで伸びてる」と思っても、直ぐに飛びつかないで下さい。皆さんがイメージしている世帯とは異なるかもしれません。
家庭には一通りの耐久消費財(テレビ、冷蔵庫、洗濯機)が揃っていて、週末には家族でデパートに車で買い物、レストランで夕食を食べて、夜にはNetflix、ネットで買い物している層をターゲットとしてイメージしてるなら、上位中間層から上の層の厚さを見て下さい。
確かに現地の平均サラリーマン世帯も、同僚の誕生日に皆んなで日本の定食を食べたり、背伸びして彼女と高価な食事に行ったり、たまにはラーメンも食べますが、毎日そんなことしてる訳ではないです。
出張の時に出会う交渉相手は、ある程度会社の偉い人です。上の分類でいくと恐らく上位中間層以上の人達です。彼らと話をして「もう日本と変わらないな」と断定するのはちょっと短絡的かもしれません。
次の都市と地方との経済差に続きます。