果たしてASEANは単一市場か?
消費者市場について考える際、時々「ASEANは単一市場だと思いますか」という質問を受けます。
最初の回で触れましたが、ASEANはまだら模様とも言われ、域内各国の民族、言葉、宗教、経済規模、所得水準、価値観は、本当にまちまちです。
一方で消費者市場に関しては、ASEANで何をするかによってその捉え方が変わると思ってます。
生活必需品で勝負するなら面全体の6.7億人市場になります。アプリを使った生活支援サービス、企業向けサービスも、市場を面全体で捉えることが出来ると思います。
そうではなく嗜好品、日本の名産等で勝負をかけるなら、各国市場の成熟度合い、市場規模、嗜好をきっちり点で研究した方が良いです。これまで触れた通り、ASEAN各国の経済差はとても大きいです。
嗜好品、名産品を使って、ASEANで複数国展開したい場合、似たもの同士を集めたブロック単位で攻める、上から下に攻めるという方法もありです。
ASEANを横からブロックで捉えてみる
消費者市場の見方として、ASEANを横からブロックとして捉えるという発想があります。
ASEAN全体を国別に所得水準とかいった何らかの基準で縦に並べるとやたら差が目立つのですが、地理的に横に近いところを集めると、実は共通点、類似点も多かったりします。
例えば、タイを中心としたインドシナの北ブロック(ベトナム、カンボジア、ラオス)、イスラム国家のインドネシアとマレーシアの南ブロック、そしてフィリピンというブロック分けがあります。
これらのブロック内の国々は、人種的、宗教的にも共通点があり、生活習慣、言語も似ているところが多いです。
実際にブロック内を股にかけてビジネスを展開する現地企業も多いです。
少し話はそれますが、戦後に民族的、言語的にも近いところがあるマレーシア、インドネシア、フィリピンを統合して「マフィリンド」とする構想もあったようです。マレーシア、インドネシアはともかく、宗主国の影響なのか、個人的にはフィリピンはちょっと違う市場かなという印象です。
ASEANを縦から順に捉えてみる
リテールブランド、特産品では、シンガポールで流行ったものが一気に隣国で普及するパターンもあります。
世界の他の地域でも時折見られますが、高所得国で流行った商品が近隣の中低所得国でも流行るという縦の流れは、ASEANについても当てはまります。
この視点でいくと、シンガポールから近隣のマレーシア、それからタイ、インドネシア、フィリピンへの流れ、はたまたタイから近隣のベトナム、カンボジアへという流れを意識することになります。
実際日本のリテールブランドが、ジャカルタ、バンコクの現地デパート、高級モールと出店交渉を行うと、先方のモールオーナーから、「ところでシンガポールではOrchard Road(シンガポールの目抜き通り)のどこにお店があるの?」と聞かれることがあります。
モールオーナーからすると、「高所得国のシンガポールで売れてるなら、そのうちこっちでも流行るかも」という目算があります。しかし逆にいうと、「シンガポールで売れた実績もないのに、いきなりうちに来られても判断に困る…」というメッセージでもあります。
こうなると反強制的な形で縦攻めモデルとなり、シンガポールに小さなアンテナショップを開くことになったりします。
足元、コロナ感染による賃料値下げで出店も比較的容易になっているようですが、元々ASEANの消費者市場は爆発的に伸びてました。
どこのモールオーナーもとにかく良いテナント、売れる商品を持つテナントを入れるのに躍起です。集客力のあるモール、立地の良いモールであれば、尚更そう簡単には入居出来ません。
もしシンガポールに出店する予定がない場合、このような質問をされることも想定しておいた方が良いかもです。進出予定国と関係ない国のことをいきなり聞かれると、普通あたふたしちゃいますからね😁