ASEANの経済規模とポテンシャル

シンガポールのオフィス街。かつてRaffles Place(写真中央)に集中していた金融機関も海側(写真左側)へと進出
シンガポールのオフィス街。以前はRaffles Place(写真中央)に集中していた金融機関も海側(写真左側)へと進出。

ASEANと言えば、先ずは人口です

ASEAN経済の状況を見てみます。

先ずはGDPで域内の経済規模を測るとUSD3,002bilだそうです。数字だけ見てもピンときませんよね。要は日本の半分強ぐらいの規模で、一人当たりGDPはUSD4,500と日本の11%ぐらいしかありません…にも関わらず、人口は約6.7億人と日本の5.3倍もあります。

ASEANの概要。世界、日本との比較。
引用:https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000127169.pdf

他の地域経済統合体と比べたらどうでしょうか。ASEANの経済規模はGDPで下から2番目、一人当たりGDPは最も低いです…が、ここでも人口規模では他の地域経済統合体を圧倒してます。

ASEANと他の地域共同体との比較
引用:https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000127169.pdf

地域全体の人口が6.7億人というのだけでも単純に凄いのですが、中身を見ると更に感心します。

平均年齢が今だに20代後半と若く、人口も年々増えているのです。

国別に見ると、シンガポールを除く9カ国では30才未満が全人口の半分近くを占めます。ちなみに日本の30才未満人口比率は27%です。

ASEAN各国の人口構成。
引用:https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/a510527593af3224/20200039.pdf

平均年齢が若く人口が増えてるということは、今後しばらくは就業者数(働いてお金を稼ぐ人達)がどんどん増える、そして消費者数(物やサービスを買ってくれる人)もどんどん増える。そして経済成長が見込まれるということです。

少し格好良く言うと、ASEANは人口学的に経済成長が促進されると言われる「人口ボーナス期(生産人口比率の上昇が続く状態)」に入っています。日本では戦後の高度成長期が「人口ボーナス期」に当たります。ASEANは今がまさに高度成長期なのです。

これまでの経済成長ペースと今後の見通し

過去の経済成長ペースを、ちょっと長めに見てみます。

エネルギー産業への依存度、既に所得水準も高いブルネイはブレもあって比較的低成長です。貿易国のシンガポールも振れ幅が大きめです。

2009年の世界金融危機(日本ではリーマンショックと言われますが、世界的にはGFC:Global Financial Crisisです)、2020年のコロナ危機(未だ継続中…)には大きな影響を受けていることが分かります。

加盟各国の経済成長率には若干のバラつき、大きな外的要因の影響も見られますが、全体を長期的に慣らすと、グラフからは少し分かりにくいですが、域内経済は2000年以降平均して5%前後の成長を実現しています。

ASEAN各国の実質GDP成長率の推移
引用:https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000127169.pdf

国際通貨基金(IMF)が出している「世界経済見通し(WEO: World Econimic Outlook)」を見ると、コロナ感染が広がる前と後で世界各国、地域経済の成長ペースが一覧出来ます。

そこでは、中国、インド、ASEAN5カ国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)で構成される「アジアの新興国と途上国」が、これまでに世界で極めて高い成長を実現し、これからも実現するであろうと分析されてます。

ちなみに、最新版のWEO(執筆時点)によりますと、ASEAN5カ国の成長見通しは2021年が4.3%、2022年が6.3%となってます。日本は2021年が2.8%、2022年が3.0%でした。

引用:https://www.imf.org/en/Publications/WEO/Issues/2021/07/27/world-economic-outlook-update-july-2021

経済成長と所得向上

経済が伸びてるということは、その国でより大きな付加価値を伴うモノ・サービス、もしくはより多くのモノ・サービスが製造、販売、消費されている。或いは投資され還元されているということです。

そして経済が成長すれば、通常そこに住む人々の所得も増えます。

ASEAN地域は2000年以降平均して約5%の成長を実現したと言いました。もしそこに住む人々の所得も20年間平均して同じように5%ずつ成長したらどうなると思いますか。

人口増加、経済付加価値、労働分配率を考慮してないので、かなり乱暴な計算にはなりますが、2000年の給料が2020年には約2.6倍に増えるということです。

つまり2000年に100,000円の給与を貰ってた人は、昨年には260,000円も貰ってることになります💰💰💰これだけ所得が増えれば、日常の消費スタイルも変わりますよね。

ここ数年の間に、地域の人々もより快適な生活を求めて、家電、自動車といった耐久財、飲食、趣味、娯楽といったものにより多くのお金を使うようになってます。

少しだけ古いデータですが、この20年以内に世界主要地域、ASEAN各国の一人当たりGDPがおおよそどれぐらい増えたかが出ています。ASEANは成長率において群を抜いてることが分かります。

更に人口規模がこれまた違うので、その間に実際に拡大した経済規模はもっと大きいことが想像できますよね。

ASEAN各国の1人当たりGDPと成長率
引用:https://www.pwc.com/jp/ja/japan-knowledge/archives/assets/pdf/asean-economic-dashboard-1505.pdf

これからの楽しみ

数十年前までASEANは安くて豊富な労働力を持つ有望な生産拠点、輸出拠点として注目されてました。各国政府の外資奨励策もあり、地理的に近い日本企業を始め、多くの外資企業が進出しました。

その後、生産拠点として発展したASEANは長期的な経済成長を享受し、そこで働く人々の所得も一緒に増えました。

そして今、ASEANは生産市場だけでなく消費市場としての魅力も兼ね備えた一大市場になっているのです。

皆さんなら、この地でどんなビジネスをしてみたいですか?想像だけでも楽しいですよね。

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