事業を始める前のハコ選び

フィリピン、マニラ市街。マニラ首都圏(Metro Manila)だけで1,300万人超の人々が暮らしてます。
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進出形態について

日本人がASEANで事業を開始するには、就労可能なビザとハコに当たるEntity(法人、オフィスなど)が必要になります。

もちろん現地で事業提携先を見つけて、そこに出向するという形を取れば、事業提携先にビザサポートをお願いしなくてはいけませんが、ハコを検討する必要はなくなります(正直これが出来れば簡単です)。

外国人の場合、一般的には法人(Corporation、会社ですね)の設立を検討することになります。

会社を設立するだけならオンラインで簡単に出来るところもありますが、国、業種によっては結構な手間と費用が掛かったり、設立後の実務、その後の運用が大変だったりします。

法人以外では、駐在員事務所(Representative Office)、支店(Branch)という形態もあります。 細かく言えば個人事業主、無限責任組合、有限責任組合を設立出来るところもありますが、あまり一般的ではないのでここでは触れません。

現地で何をしたいかにもよりますが、もし企業に所属されてるのであれば、個人的には手っ取り早い駐在員事務所の検討もありだと思います。

駐在員事務所とは?

駐在員事務所、支店のメリット、デメリットを説明します。

駐在員事務所、支店ともに日本の本社に帰属する組織という建て付けは似てます。なので両者には法人格はありません。あくまでもオフィス、お店の一つです。

メリットは設立が比較的に容易で、設立費用、監査費用を始めとした維持費用も安く抑えられることです(国によっては一定額の資金持ち込みが必要な場合もあります)。資本金の払込もないです。あまり考えたくないかもしれませんが、もしもの時の撤退手続も比較的容易です😅。

また法人ではないので、現地の会社法の要件全てを満たす必要がなく何といっても管理が楽です。

駐在員事務所であれば、監査報告書の作成、税務申告、コーポレートセクレタリーの任命、取締役会、株主総会の開催、現地会社法に基づくコンプライアンス対応といった管理業務に割かれる労力がぐんと減ります。

支店の場合、監査報告書、税務申告を行う必要はありますが、やはり法人と比べると管理業務は減ります。

皆さんの会社が最初からちゃんとした管理担当者を手当てしてくれるならともかく、最初は一人もしくは数人で現地拠点をスタートし、経理、総務は掛け持ちという場合は本当に助かります。

今時、大体どこの会社も「最初から管理業務にお金を使えない」、「儲かってから言ってきて」的なことを言いますからね。

デメリットですが、駐在員事務所の場合は事業活動、営業活動が認められてません。ですので事前調査といった売上に直結しない活動を当面は行うことになります。

駐在員事務所の事業活動が認められてない理由は、各国でそもそも駐在員事務所がその国で事業を行うための準備機関とみなされているからです。そのため認可期間も数年程度(3年前後。国によって延長申請は可能)と短く、大規模な人材採用も出来ません。

まあ普通に考えたら、現地調査なしでいきなり知らない国で事業始められませんからね。事業展開の最終形態ではなく、一つのステップとして駐在員事務所を見られたら良いと思います。

支店の場合は本社業務の範囲内であれば営業は認められますが、そもそも支店開設が認められている業種自体が少なく使い勝手があまり良くないです。正直利用頻度も高くないです。

使い方としては、駐在員事務所は現地進出をする気は満々、会社でも既決事項だが現地市場の調査、立地選定、業者選定、パートナー選定にもう少し時間を掛けたい場合に向いています。

支店は事業のフルライセンス取得が規制上困難、収益化までに時間が掛かりそうなのでそれまでの赤字、税務上の損金を本社に吸収させたい場合等で活用出来ると思います。

小さく始めて育てる発想

ASEANでは当局から事業認可を取得するのに思いのほか時間が掛かったり、認可を待ってる間に物事が想定外の方向に向かったりすることがあります。

消費者向けビジネス等で開業からいきなり売上が上がるならともかく、事業開始、売上計上までにある程度の時間がかかる場合は、駐在員事務所を中心とした簡易版のハコを検討しても良いかと思います(この辺りは今度改めて書きます)。

早々に会社だけ作ったものの、最初の数年は赤字垂れ流し、なかなかライセンスも取れない、そうこうしてる間に現地規制が変更された、パートナーの気が変わった、自分が社内異動で帰国になった等、笑うに笑えない話もあります。

また駐在員事務所を活用した準備期間が、後々役立つこともあります。

現地に早くからスタンバイしておくことで、日本からは見えなかったものが徐々に見えてきます。それらを早めに見つけて社内計画に軌道修正をかけることも大切です。

準備期間中に現地で様々な人と知り合っておけば、後々の事業開始時の大切な財産にもなります。

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